短編童話『虎の威を借りる狐 ~三匹の小さな「トラ」さん~』

秋の森は、金色の光でいっぱいでした。

カサカサと落ち葉が歌う中、苔むした大きな丸太の上に、ちょっと奇妙で、とびきり可愛い三匹の姿がありました。

彼らはキツネの兄弟、長男の「こたろう」、次男の「ころすけ」、そして末っ子の「こんた」です。

でも今日、彼らはただのキツネではありません。

お母さんがフェルトで作ってくれた、しましま模様の特製スーツに身を包んだ、勇猛な(つもりの)「トラ」なのです!

「いいかい、みんな。今日はこの丸太の向こうにある、美味しいキノコの丘まで行くんだ。あそこには、意地悪なカケスがいるからね。絶対にナメられちゃいけないよ!」

リーダー格のこたろうが、後ろ足で立ち上がり、短い前足を精一杯上げて「がおー!」とポーズを決めました。

「ぼくたちがトラだってこと、見せつけてやるんだ!」

「がおー!まかせてよ兄ちゃん!」

元気いっぱいの次男、ころすけが続こうとしましたが、勢い余って苔に足を取られ、ころん!とでんぐり返し。丸太の上でお尻を空に向けてしまいました。

「あ痛た……。トラさんになるのって、むずかしいなぁ」

ころすけが目を回していると、末っ子のこんたがおずおずとフードの耳を直しながら言いました。

「ねえ、こたろう兄ちゃん。ぼくたち、本当に強そうに見えるかなぁ?耳が隠れちゃって、ちょっと変な感じがするよ……」

こたろうは、心配そうな弟たちを見て、えっへんと胸を張りました。

「大丈夫さ!ことわざにもあるだろう?『トラの威を借りるキツネ』ってね。ぼくたちは今、森で一番強いトラの力を借りてるんだから、カケスなんてイチコロさ!」

三匹は気を取り直して、丸太の上を行進し始めました。

「がおー、がおー」と、可愛い声を響かせながら。

すると、頭上の枝から「ギャーギャー!」と騒がしい声がしました。噂のカケスです。

「なんだお前たち!変な格好をして!」

すかさず、こたろうが前に出ました。

「ぼ、ぼくたちはトラだぞ!強いんだぞ!えいっ!」

こたろうの合図で、三匹は練習した「トラのポーズ」を一斉にとりました。

……一匹は転がり、一匹はフードを気にしながらですが。

カケスは三匹の、あまりにも一生懸命で、ちぐはぐな姿をじっと見下ろしました。そして、

「プッ……アハハハ!なんだそれ!トラっていうより、しましまの毛糸玉じゃないか!」

カケスはお腹を抱えて笑うと、「面白いもん見せてもらったお礼だ」と言って、木の実を三つ、ポス・ポス・ポスと落として飛び去っていきました。

三匹は顔を見合わせました。

「……怖がられなかったね」と、こんた。

「でも、おやつをもらえたね!」と、転がったままのころすけ。

こたろうは、フードを脱いで、いつものキツネ耳をピコピコさせました。

「まあ、いっか!トラの威は借りられなかったけど、キノコの丘には行けそうだしね!」

三匹の小さな「トラ」さんたちは、もらった木の実を頬張りながら、秋の夕暮れの中、仲良く転げ回って遊びました。

その姿は、本物のトラよりもずっと強くて、幸せそうでした。

(おわり)


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